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 「今に泣きを見るぞ」というのが、常識外れで無鉄砲な若輩に向かって放たれるオトナたちの決まり文句である。そう嚇かされて不安に駆られながらも、敢然と「自分は特別だ」と突き進むのが若者の特権というものではないか。そんな青春への思いを塗り込めた色川武大の短編小説を伊藤彰彦と内藤研が脚色、内藤誠の二十五年ぶりの監督作品として生まれたこの映画は、「自分は絶対に泣かない」と断言して我が道をゆく懲りないジャズ・ピアニスト、キッコの半生を間近にいた小説家の眼でクールに描いた。

 脚色は、小説家を原作よりも若く設定、幼馴染カップルの突っ張り青春回想記に仕立てた。ヒロインの汐見ゆかり、小説家の斎藤工、主役二人のスピーディーで適確な動きが決まって一時間十六分を快走、きっちりと決着がつくが、渋谷毅のジャズが嫋々と「ラジオ深夜便」気分を吹き込み、いつしか懐かしいがどこか怖い色川ワールドに吸い込まれる。この辺のお膳立ての巧さは、知性派の内藤誠監督ならでは。なお「明日泣く」のは、今日はそんな暇はないから泣かない決心でと思っていたが、リリアン・ロスの歌を調べたら、今日は泣く気力もないからという真逆の心境を歌ったものだと分かった。

 やっぱり扮したスーザン・ヘイワードゆえに強い女の歌という印象を刻みつけられていたのでしょうな。

 河原畑 寧

明日泣く公式サイト
・11月19日公開
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