日本映画ペンクラブ推薦映画


「抱擁」

「抱擁」は坂口香津美監督が自分の年老いた母親を撮り続けた異色のドキュメンタリー映画。
2014年東京国際映画祭日本映画スプラッシュ部門で正式上映作品に選ばれた。
坂口監督の母、すちえさんは78歳で長女を病気で失い、夫も病死してしまう。
母親は、不安神経症になり精神安定剤がなければ動転が激しい。
息子である坂口監督を「人殺し」呼ばわりする。
ほとんど団地の一室に寝たきりで夜は徘徊する。
膝の具合も悪くてほとんど歩けない。
すちえさんの妹が鹿児島県の種子島から葬式のために上京。
状態を見かねて種子島に連れて帰る。
すちえさんは若い時に島から出て働いた。
だから親族も島には多い。
みんなが温かくすちえさんを迎える。
医師にも診てもらえ、ケアハウスにも通うことができた。
人情と手厚い介護、陽光の島がすちえさんの心を溶かしていく。
坂口監督は母親が精神的にも肉体的にも回復する姿をカメラに収めていった。
母親とはいえ、入浴まで撮影するのは勇気がいることだ。
プライバシーを冒してまで撮りたかったものは、高齢化時代にだれもが経験する老いに立ち向かう母親であり周囲の人々の姿だろう。
何よりも撮り続ける根気には感服した。
人間は支える人々と環境が何より大事だと教えられた。

野島孝一

4月下旬シアターイメージフォーラム公開
抱擁 公式サイト



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