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 真白な外国船が浮かぶペルシャ湾。青い海を背に立っている笑顔の少年。天涯孤独の11才。浜辺の廃船に住み、空きビンを拾い、ゴミ山を漁り、水売りや靴磨きで何とか生計を立てている。その屈託がない笑顔からは、生活の苦しさとか暗さなどといったものは微塵も感じられない。

 イラン映画が国際的に脚光を浴びるきっかけを作ったアミール・ナデリ監督、’85年の作品である。

 題名どうり、少年は画面いっぱい駆けまくる。仲間たちとサッカーをしたり、駆けっこをしたり、時にはお金を払わない客をどこまでも追いつめたり、毎日が自分との競争みたいだ。はじめて学校に通って習った文字を叫びながら走るシーンは、とくに感動的だ。

 圧倒的な映像の美しさ。生きることの素晴らしさが画面からあふれ出てくるようだ。

 上映時、姿を見せたナデリ監督は、挨拶の最後をこう結んだ。「この映画を黒澤明監督に捧げます」と。

平山 允

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