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◆ 第66回カンヌ国際映画祭報告



 今年のカンヌ国際映画祭は、是枝裕和の『そして父になる』、三池崇史の『藁の楯』の2本がコンペにエントリーした他、河P直美が審査員に選ばれるなど、開催前から日本のマスコミを大いに賑わせた。

 今年の審査員長はスティーヴン・スピルバーグ。今でこそハリウッドで最も成功した監督と讃えられる彼だが、40年前の1974年には『続・激突!/カージャック』をカンヌのコンペに出品し、賞を競った若手監督だった(同年のパルム・ドールを受賞したのがフランシス・フォード・コッポラ『カンバセーション…盗聴…』だった)。

 そんなスピルバーグ率いる審査員がパルム・ドールに選んだのは、チュニジア生まれで南仏育ちのアブデラティフ・ケシシュ6本目の長編『アデルの人生』だった。15歳の女子高生アデルと、青く髪を染めた美大生エマとの恋模様を数年に渡って描いた作品で、アデルを演じたアデル・エグザルコプロスとエマを演じたレア・セドゥの二人もケシシュと並んで賞を受けた。

 是枝裕和の『そして父になる』は、予想以上に好意的に受け入れられ、審査員賞を受賞した。是枝は2004年に『誰も知らない』で柳楽優弥が男優賞を受賞しているが、本人の受賞は初めて。ふだん審査員賞は一番下の賞だが、今年は『アデルの人生』の二女優が実質的な女優賞扱いだったために男女優賞が格下げになり、代わりに審査員賞が格上げになって、パルム、グランプリ、監督賞に次ぐ4番目の賞になった。

 三池崇史の『藁の楯』は、百%娯楽映画だったことが裏目に出て、評価は散々。昨年『愛と誠』がミッドナイト枠で上映され、熱狂的な支持を受けたことを思うと、三池崇史の作品サイクルと映画祭の巡り合わせが微妙にずれてきているように思って残念である。

 カンヌには<コンペ>と<ある視点>という、2つの公式部門がある(正確に言えば、この2部門にエントリーした作品だけが公式(正式)出品作品と呼称できる)。FIPRESCIは、公式部門それぞれに1つずつと、監督週間と批評家週間を合わせて1つの計3つの賞を与える。今年の審査員長は事務局長のクラウス・エダー氏で、9人の審査員が3人ずつに別れて各賞を担当した。その結果、コンペ部門はアブデラティフ・ケシシュの『アデルの人生』、ある視点部門はモハマッド・ラスロフの『原稿は燃えない』、監督週間&批評家週間はジェレミー・ソーニエの『青い廃墟』が受賞した。『青い廃墟』は未見だが、イランの『原稿は燃えない』は、現政権下での秘密警察による文化人弾圧をテーマにしたもので、内容もセンセーショナルだが、映画に協力したスタッフがすべて匿名という衝撃作だった。

 リーマン・ショック以降、低迷していた日本における外国映画配給は、最近ぐっと持ち直してきて、カンヌでもコンペ部門で紹介された作品は、ほぼ日本での配給が決まっている。むしろ今の日本における問題は、映画をいかに公開するか(できるか)に移ってきている。特に問題だと思うのは、いまだに続く性描写への検閲である。今年カンヌで最も高く評価された『アデルの人生』が、その大胆な性描写ゆえに、そのままの姿で日本公開できないとすれば、イランの言論弾圧とは別の意味での文化に対する蛮行が、今の日本に存在することになる。もちろん性描写の解禁には日本人の熟成度との兼ね合いもあるが、あからさまな表現の自由の侵害には何らかのモーションを起こしていかねばならない。

 齋藤敦子


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