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◆ 第18回プサン映画祭国際報告 田中千世子


 「若いメンバーがもっといればいいのに!」と、ベルリンのフリーランサー、カロラインが審査会の途中でぼやいた。彼女は輝ける20代! 他の4人は50代から70代だからカロラインの気持ちもわからぬではないが、審査が初めての彼女は、ぼやいた揚句最終投票を棄権した。

 一番の年長者はポーランドのアンジェイで、最初の顔合わせで皆が彼を「アンドレ」と呼ぶと、「ポーランド語ではアンジェイだ」と説明しても全然改まらず気を悪くしていた。彼は経験豊かな東欧の典型的な映画批評家だ。それが災いしてか、いつもワンテンポ遅れていた。彼がおもむろに自分の考えを展開し始めると、審査会はとっくに次の段階に進んでいるのだ。FIPRESCIの審査員は私にとって十年ぶり。1980年代後半から会議がフランス語にかわって英語が主流になると、各自が映画論を披露することが稀になり、推奨する作品のシャープな応援演説を手際よく行う方に向かっていった。今回は一段と手際よさが顕著だった。

 対象作品はコンペ部門の「ニュー・カラント」の12本。5人の審査員がいつも一緒に会場で見て、感想を言い合ったからレベルの低い作品は早々と切り捨てられた。前半で話題になったのは、パキスタンのアイヤズが絶賛した金井純一監督の『ゆるせない、逢いたい』やアンジェイが評価した韓国の『パシャ』である。40歳のヒロインと20歳前の青年の同棲生活を描いた『パシャ』はキム・キドク風であるのが欠点だと私は思ったが、アンジェイはこの映画に新しいスタイルを発見したと思ったらしい。最終的に韓国のイ・ヨンスン監督の『10分』に決まる。就職の難しさと組織の冷たさを正攻法で描いた力作である。正攻法だが、主人公の青年の爆発しそうな破壊衝動が内包されているのがとても面白い。破壊はわざわざ見せなくてもいいのだ。まさに「秘すれば花なり」である。

田中千世子

http://www.biff.kr/
2013.11.


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