日本映画ペンクラブ

事業内容 会員一覧 リンク集 お問合せ 会員ページ




◆ 第71回カンヌ国際映画祭、FIPRESCI賞リポート 斎藤敦子




コンペ部門の受賞作『バーニング』、左からスティーヴン・ユァン(一人おいて)チョン・ジョンソ、イ・チャンドン監督、ユ・アインの各氏。


 今年のカンヌ映画祭は、例年より1日早い5月8日(火)にオープニング、19日(土)にクロージングと、スケジュールが1日前倒しになった結果、授賞式前日に行われていたFIPRESCI授賞式が、今年は本賞の授賞式直前(3時間前)に変更になり、かなり慌ただしくなりました。加えて、今年は例年正式上映の前に行われていたプレス上映が、正式上映と同時、または後と変更になったことで、プレスの動き方が難しくなりました。このことに関して、イザベル・ダネル新会長が昨年からカンヌ映画祭事務局に抗議の手紙を送っていたそうですが、それについて返事はなく、映画祭開催前日に急にティエリー・フレモー代表が記者会見を開いて説明するという対応になり、プレスから抗議の声があがりました。FIP`RESCIでは、今年の参加者からスケジュール変更についてアンケートをとり、再度カンヌ映画祭事務局に再考を申し入れることになりました。

 さて、今年のFIPRESCIの審査員はフランスのミシェル・シマン氏を長とする9人で、コンペ部門、ある視点部門、パラレル部門(監督週間と批評家週間)から1本ずつ受賞作を選びました。

 コンペ部門の受賞作イ・チャンドン監督の『バーニング』は村上春樹の短編<納屋を焼く>を原作に、田舎からソウルに出てきた小説家志望の青年(ユ・アイン)が、同級生の女性(チョン・ジョンソ)と再会し、アフリカ旅行に行くという彼女の留守宅で猫の世話をすることを引き受け、帰ってきた彼女から謎の男を照会され、グリーンハウスを焼くのが趣味だという男にどんどんのめり込んでいくというミステリー。整形で元の顔が分からなくなった女性、本当にグリーンハウスを焼いているのかどうか分からない謎の男(スティーヴン・ユァン)、いるのかいないのか分からない猫など、目に見えるものの不確かさ、アイデンティティの模索をテーマにした抽象的な作品で、批評家の中で最も高く評価された作品でした。

 ある視点部門はベルギーのルカス・ドント監督の『少女』に。男の体と女の心を持って生まれた少女ララが、男性から女性へと性転換する過程とバレリーナを目指して訓練を受ける過程を重ね合わせて描いた作品です。ドント監督はカンヌのシネフォンダシオンのレジデンスに選ばれた新鋭で、これが長編デビュー作。主人公のララを、ベルギーの新進若手ダンサー、ヴィクトル・ポルスターが見事に演じて、ある視点部門の演技賞を受賞。その他、新人監督賞にあたるカメラ・ドール、同性愛をテーマにした映画に与えられるクィア・パルムの合わせて4賞を受賞した今年の注目作でした。

 パラレル部門は、批評家週間で上映されたハンガリーの『ある日』が選ばれましたが、残念ながらこの映画は未見です。監督のソフィア・シラジーはイルディコー・エニェディ監督の『心と体と』で助監督を務めた方で、この作品が長編デビュー作です。 (齋藤敦子)

FIPRESCI受賞結果
コンペ部門:『バーニング』監督イ・チャンドン(韓国)
ある視点部門:『少女』監督ニコラス・ドント(ベルギー)
パラレル部門(批評家週間):『ある日』監督ソフィア・シラジー(ハンガリー)




ある視点部門の受賞作、『少女』のニコラス・ドント監督。



2018.7.11



Copyright (C) 2011 日本映画ペンクラブ All Rights Reserved.