日本映画ペンクラブ

事業内容 会員一覧 リンク集 お問合せ 会員ページ




◆ 「2013年の審査員をつとめて」 清藤秀人


中村義洋監督(左)と筆者

 京橋のフィルムセンターから渋谷のシネクイントへ。場所を変えて今年も開催された第35回ぴあフィルムフェスティバルを一言で表現すると、「喧噪の中の静寂」。つまり、雑然として騒がしいセンター街を通り抜け、さらに若者でごった返すスペイン坂を上り切った先で展開する、外の世界とは真逆の、物静かで情緒的な自主映画の祭典という感じでした。しかし、作者たちは昨年同様に熱く、賞を競い合った16本のレベルは昨年に比べて数段高かったことを、まずは報告したいと思います。

 今年、特に印象に残った作品を紹介しましょう。まず、学習院大学を卒業後、出版社に勤務しながら夜間ゼミで映画作りのノウハウを学んだという平野麻美監督の「震動」(映画ファン賞)は、ハンデを乗り越えて行こうとする恋人たちの関係の変化を完璧な会話で構成したウェルメイドなメルヘンでした。また、泉谷智規監督が高校時代の学友を集めて作った「女島」(審査員特別賞・ジェムストーン賞受賞)は、闇社会で逆転した日中関係を血みどろのバイオレンスで描いた、近頃少ない硬質のアクション映画だったと思います。僕とまつかわゆまさんが日本映画ペンクラブ賞に選んだのは、最年少22歳の山下洋助監督が立教大学の卒業制作で作った「夜の法則」(審査員特別賞も同時受賞)です。映画は、重苦しく立ちこめる夜の闇の中で、ストーカーと連続殺人鬼が身悶えながら格闘するスリルが他作品を圧倒していて、クライムアクションとしての面白さもピカイチ。"映画を未来を切り拓くための"日本映画ペンクラプ賞に相応しいと感じました。ここに並べた形容詞は決して大袈裟ではなく、作り手の才能としたたかな計算と、欠点すら魅力に変えてしまう愛嬌と情熱の強さに押し切られた結果だと、解釈して頂いてけっこうです。

 そんな中で、俳優の森山未來さんを始め5人の最終審査員がグランプリに選んだのは、山形出身の市川悠輔監督がネットで募集したスタッフとキャストと共に作った「夜とケイゴカー」でした。親の持ち物であるしょぼい軽自動車に相乗りしてドライブを始めてみたものの、予定がことごとく覆ってどんどん惨めになっていく男子2人の痛いロードは、突拍子もない展開といい、突如現れるカメラの影といい、かっこいい映画的な幕切れといい、良い意味でプロっぽくない継ぎ接ぎが魅力的なPFFグランプリに値する野心作だったと思います。

 授賞式も熱かったです。最終審査員の中井美穂さんがグランプリ作品のタイトルを読み上げた瞬間、思わず歓声を上げたのは「夜とケイゴカー」の主演俳優、板倉武志さん。壇上に上がっても涙が止まらず、「撮影中に怪我をして迷惑かけてばかりだったので、授賞できてホントに嬉しいっす!」と絞り上げる姿を見て、こうしてまた"映画の輪"の中にいられる至福を密かに抱きしめる自分がいました。授賞式後のレセプションでは、同じく最終審査を務めたPFFのOBである中村義洋監督と「夜の法則」イチオシで意気投合。監督は「今の素人は僕らの時とは比べものにならないほどレベルが高い」と驚嘆していました。でも、彼らがプロデビューできるかどうかは微妙です。日本映画が活況と言われているのは表層のみ。映画ビジネスが厳しい状況にあることに変わりはないのです。それでも、彼らはきっとやってくれるに違いない。ここに紹介した名前を是非記憶に刻んでおいて下さい。間違いなく、近い将来、原作やドラマの知名度に頼り切った現・日本映画界のずるい体質に風穴を開けてくれるはずですから!!!




Copyright (C) 2011 日本映画ペンクラブ All Rights Reserved.