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“ラクダと夏とマリリン・モンロー”

「夏をゆく人々」と「僕たちの家に帰ろう」を見て

 映画に登場するラクダでいちばん印象的なのはなんといっても「アラビアのロレンス」ではないだろうか。70ミリの大画面、地平線の彼方から豆粒のような黒い点がカメラに向かってユラユラと揺れながら走ってくる。

 それがラクダに乗ったオマー・シャリフ(7月10日83歳で死去とのニュース)だとわかったときの驚き。鮮やかな演出の冴えわたるデヴィッド・リーン監督の手腕。

 ひと昔前ということになるが、2004年8月に公開されたドイツ映画「らくだの涙」というドキュメンタリーがあった。舞台はモンゴル。遊牧民族の4世代家族は砂嵐のきびしいゴビ砂漠で暮らす。1頭のラクダが白い子を生んだ。子供に愛情を持てない母親ラクダを人間が音楽療法で奇蹟的に癒していくーーというような話だった。なぜそんな前の映画のことを言えば、最近ラクダの出てくる作品を続けてみたのでつい昔の映画のことを思い出した。

 「夏をゆく人々」と「僕たちの家に帰ろう」の2作がラクダに関係ありの作品。と言ってもその扱いはだいぶ異なる。

 昨年(2014)のカンヌ映画祭でグランプリを受賞したイタリアの女性監督アリーチェ・ロルヴァケル(33歳)の長篇2作目である。イタリア中部トスカーナ周辺の人里離れた土地で昔ながらの方法で養蜂を営む一家の物語、ジェルソミーナは4人姉妹の長女で、父の独自の教育と愛を受け、父よりもミツバチに精通している。家族は自然のリズムのなかで生活をしていたが、その村にテレビ番組のクルーが訪れ、一家がひとりの少年を預かったことから、日々の生活にさざ波が立ち始める…。

 ということでどこでラクダが登場するのかと言えば、父親がどこかから連れて来て、庭の中央につないである。子どもたちはびっくり。それもラストシーンに、というのがなんとも泣かせる。このラクダにはどんな意味が隠されているのだろうか ? 不思議である。

 「僕たちの家に帰ろう」はむずかしいことはなにもなく、初めからラクダが大活躍である。古代シルクロードの一部として繁栄した中国西北部を舞台に少数民族ユグル族の幼い兄弟が離ればなれに暮らす両親のもとへ帰る道中、さまざまな出会いと別れを経験し成長していく姿を描いている。その兄弟にずっとついているのが二頭のラクダだ。

 ユグル族とは5世紀ごろに一大国家を築いた歴史を持ちながら、移り変わる時代の波にのまれ、今では文字や言葉も廃れてしまったということだ。滅びゆく民族の現在その子孫たちは1万4千人ほどになってしまったといわれている。

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 ラクダとはまったく関係ないのだが、夏になると、それも8月5日が近くなるとマリリン・モンローを思い出す。日本流にいえば今年は53回忌で、現在(2015)生きていれば89歳ということになる。赤いバラを捧げよう。

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駱駝 ラクダ
 ラクダ科のほ乳類のうちヒトコブラクダとフタコブラクダをさす。肩高2メートル内外ほどの大型草食獣。
 背のこぶに養分を貯蔵し、鼻孔を閉じることができる。足の裏は丸く広がった肉質部があって砂の上を歩くのに適し、長時間水を飲まずにいられるなど砂漠の生活によく適応した体を持つ。
 家畜化の歴史は古く、古代より「砂漠の舟」と呼ばれ、乗用、運搬用につかわれ、毛・皮・肉・乳も利用された。
 北アフリカ、西アジア、モンゴルなどに分布する。  

                                                      土田英一

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