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 チベット自治区の区都であるラサは、チベット仏教の聖地でもある。だから大勢の信者たちが各地から集ってくる。

 これは、チベット東南部にある小さな村の11人の住人が、聖地ラサを?て、最終目的地である聖なるカイラス山までの2400キロを、ほぼ1年という、途方もない時間をかけて歩く巡礼旅の物語である。

 歩くーーといっても、ただ単に歩くだけではない。全行程を、「五体投地」、つまり、両手、両膝、額の五体を地面に投げ打ち、その姿勢のまゝで祈りながらくり返し進んでいくのである。

 乗用車やトラックが行き交う高原のハイウエイや、石ころだらけの山道を、さらには川のように水があふれた道路を、一行は、ひたすら五体投地で進んでいく。文字通り、山間いを往く尺取虫の行進のようにも見えるが、峨峨たる岩山を背景に進む村人たちの姿を見ると、何か神々しささえも感じてくる。

 村人たちは、この苛酷な試練にも、決して弱音を吐くこともなく、むしろ嬉々として、見ている我々をホッとさせてくれる。

 旅の途中、出産間近だった若い女性が元気な男の子を産み落とす。数日後、メンバーはふたたび五体投地の巡礼旅をつゞけることになる。一方で、最終目的地に着いた翌朝、チームの中では最高齢の老人が息をひきとる。ひとつの旅の中での生と死。輪廻転生を信じるチベットの人々ならずとも人生の縮図を見るような意義深いシーンとなっている。

 老人は、習慣に従って鳥葬に付されるが、雪を頂くカイラス山を背景に、ラマ僧の手によるこの鳥葬のシーンは、身内が震えるような見事な構図を作り出している。

 秀作「胡同のひまわり」などの中国人監督チャン・ヤンの手になるこの作品は、ドラマ構成という形式はとっているが良質なドキュメンタリー映画を見ているような気がする。

平山允

ラサへの歩き方 公式サイト
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