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 とにかく、埼玉県のイメージや埼玉県民の自虐ネタを日本を代表する俳優たちが大いに遊び飛ばしたのがこの映画だ。「埼玉県民が東京に行くには通行手形が必要」という冗談を映画化したといってもいい。関東圏第三位争いの映画でもある。

 ともすれば差別的になりかねないテーマを自虐的な笑いと、人それぞれが持つ街や都市のイメージに重ね合わせた忖度と遠慮?が蔓延する昨今の風潮に一石を投じたともいえる。

 こんなもの映画にしていいのか、こんなに実際あるものをディスったりおちょくっていいの。見ている方がハラハラするのではないかと感じた観客諸兄は現代社会に毒されてはいまいか。これは遊び、これは冗談と寛容な心で受け止めることをいつしかこの国は許さなくなった。

 東京を頂点とするヒエラルキーの中で側近の神奈川、通行手形が必要な埼玉、千葉。北関東に至っては未開の地扱い。だが、これも住めば都という言葉を使わなくなった結果なのだろうか。都会の定義は手軽、便利、おしゃれが含まれていなければだめだったかもしれないが、全国の地方都市は首都圏と同等の店舗などが並ぶ時代になった。大都会とは言えないが、地方都市のレベルアップはできたのではないか。だがそれは全国が平均化して特徴のない街になったことを示す。それじゃあつまらない。埼玉は全国地方都市の新たな理想の街となったのではないか。

 この企画はよくぞ大真面目にふざけてくれたといえる。その企画を理解してスタッフや役者が遊びきった。この映画の役割と意味は日本社会に一石を投じたといえる。名作ではないが哲学的力作の太鼓判を押すとともに大いに笑っていただきい。

角谷浩一

翔んで埼玉 公式サイト

掲載日 2019.2.9
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