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 アーサー・コナン・ドイルは1887年に長編小説『緋色の研究』を出版し、探偵シャーロック・ホームズをこの世に誕生させた。コナン・ドイルによって書かれたホームズ物語は60編で、その大半がジョン・H・ワトスン医師の手記の形で発表されている。

 コナン・ドイルが現役で執筆中に、すでに数々のパロディやパスティーシュが出され、舞台劇となり、映画が作られた。それはコナン・ドイルの没後も延々と続いており、今やシャーロック・ホームズといえば探偵の代名詞、鹿撃ち帽、インヴァネスコート、パイプのセットがトレードマークとなっている。

 ホームズが活躍した時代は19世紀末から20世紀初頭で、住まいはロンドンのベイカー街、番地が221B、それゆえ現代でもベイカー街は重要な観光スポットであり、訪れるファンが途切れることはない。

 ホームズを演じた俳優としては、19世紀の舞台でウィリアム・ジレット、1940年代の映画でベイジル・ラスボーン、1980年代のTVでジェレミー・ブレットが著名である。

 その他、無数の映像作品が作られているが、戦後のわが国で公開された映画はビリー・ワイルダー監督『シャーロック・ホームズの冒険』、ハーバート・ロス監督『シャーロック・ホームズの素敵な挑戦』など、数本にとどまっていた。

 今世紀に入り、ようやくガイ・リッチー監督がロバート・ダウニーJr主演で続けて2本作り、さらにBBCのTV版『SHERLOCKシャーロック』シリーズが放送されるにいたって、ホームズファンを歓喜させることになる。

 2010年から始まったBBCの『SHERLOCKシャーロック』はコナン・ドイルの原作を踏まえながら、舞台を21世紀、現代のロンドンに設定している。

 ベネディクト・カンバーバッチのホームズはパソコンを使って推理し、タクシーで犯人を追い、マーティン・フリーマンのワトスンはインターネットのブログで事件の手記を公表する。

 原作に登場する脇役のハドソン夫人、レストレード警部、マイクロフト、悪役のモリアーティも『SHERLOCKシャーロック』シリーズではすべて現代人である。

 シャーロック・ホームズを現代に置き換えるというアイディアは好評で、1シーズンが3作、今までに3シーズン9作が放送されている。

『SHERLOCKシャーロック 忌まわしき花嫁』はBBCのTVシリーズの特別版として、本年、英国で放映されたが、わが国では、この特別版が劇場公開されることになった。

 TVドラマをスクリーンで鑑賞するなんていかがなものか、そう思われる方もおられようが、1シーズンに3作しか作らない手間隙かけたドラマのさらに特別版であるので、これはもう、充分に劇場鑑賞にたえられる仕上がりである。

 もうひとつ、今回の特別版の見どころは、舞台設定が19世紀末のヴィクトリア朝時代であること。

 アーサー・コナン・ドイルの原作と同時代、霧のロンドンを馬車が走り、鹿撃ち帽にインヴァネスコートのカンバーバッチがパイプをくわえて登場する。

 原作にないオリジナルストーリー「忌まわしき花嫁」事件とは。

『SHERLOCKシャーロック』シリーズのファンも、コナン・ドイルの愛好家も、同時に満足するに違いない。

 飯島一次

SHERLOCKシャーロック 忌まわしき花嫁 公式サイト
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