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 赤ん坊取り違えの話というと、今大ヒットしている「そして父になる」と同じ?という反応が返ってくる。しかし、スケールという点では問題にならない。こちらは事実が判明したのが、生後18年近くもたってからだし、それがイスラエル人とパレスチナ人、つまりユダヤとアラブという、永遠の宿敵同士だから。

 イスラエルの病院で二つの家族が初めて顔を合わせる場面には、思わずこみ上げてくるものがある。ここで話される言葉も、ヘブライ語、アラビア語、フランス語そして英語で、この地域の複雑さを物語っている。母親同士はフランス語で直接話しはじめ、打ち解けるが、体裁を気にする父親同士は英語ができるものの、不器用で会話が続かない。また、息子を思う母親たちの感情がじつにうまく描かれているのも、女性監督ならではだ。

 イスラエルが国境沿いに建設した高い壁に囲まれるパレスチナに入って、ユダヤ人は何を、また、はじめてテル・アヴィヴに足を踏み入れたパレスチナ人は何を感じただろう?一歩間違えば、悲惨な結末を迎えることにもなりかねないし、あわや一触即発の事態を迎えそうにもなる。それでも、希望に満ちたエンディングには、見ていてほっと、そしてほろっとする。

 去年の東京国際映画祭で、グランプリと監督賞受賞後の記者会見でロレーヌ・レヴィ監督は「この賞をイスラエルとパレスチナの子供たちに捧げたい」と語り、未来を若者に託していることがわかる。個人的には今年のナンバー・ワン候補。是非是非、劇場に足を運んで欲しい。

宮内鎮雄

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