去年の東京国際映画祭のコンペティションで上映され、監督賞と観客賞を受賞した傑作がやっと公開される。
第二次世界大戦中のユダヤ人の話だが、スケールが桁違いに大きく、パリ、フランス国内のユダヤ人収容所、ニュー・ヨーク、フィレンツェと、舞台がダイナミックに変化。時代も1942年から現代までと70年近くにわたるのだが、それを111分とコンパクトにまとめた監督の手腕には脱帽だ!去年見たときにも大感動、今年見直してもじつにうまく作られていることに感心してしまった。個人的には今年のナンバー・ワンにほぼ決定。
ずっと気になっていたのは、買い付けが決まってからどうして公開まで一年近くも時間がかかったのかということだ。配給会社ギャガの担当者に聞いたところ、この作品を気に入り、是非お正月映画にという劇場側の意向によるものだということだ。それは納得できるのだが、この間にパリのユダヤ人を収容するシーンが出てくる「黄色い星の子供たち」が公開され、この映画を見た人が「サラの鍵」を見ても、その部分では衝撃度が薄れてしまうに違いない。
じつにもったいない話だが、完成度は比べ物にならないので、是非是非、劇場に足を運んで欲しい。重い事実が続いた末の、希望に満ちたラスト・シーンに思わず涙するだろう。
宮内鎮雄
サラの鍵公式サイト
・12月17日公開