世界の涯ての鼓動

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「パリ、テキサス」「ベルリン天使の詩」「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」などドラマからドキュメンタリーまで幅広く手掛けるヴィム・ヴェンダース監督のイギリス映画。
J.M.レッドガードの小説「Submergence」(潜水の意味)が原作だ。
MI-6の諜報員ジェームズ(ジェームズ・マカヴォイ)と海洋生物数学者のダニー(アリシア・ヴィキャンベル)は、休養先のフランス・ノルマンディーのホテルに偶然泊まり合わせ、たちまち恋に落ちる。
しかし2人は、生死をかけた任務のために、別れなくてはならなかった。

海洋生物数学というのが聞きなれない。
生物学はただ観察すればいいと思い込んでいたが、生物の起源などを研究するには応用数学が必要とされるという。
ダニーは相当頭脳明晰のうえに、すこぶる美人。
相手のジェームズも知識豊富だから2人の会話は高等数学の講義を聞くようだ。
理想的なカップルではあったが、出会うのがちょいと遅かったみたい。

ダニーは深海探査艇で超深海層からさらに深く潜る計画。
海底火山の周辺を探れば、生物誕生の謎が解けるかもしれない。
でも、潜水艇に不具合が生じれば、水圧で一瞬にしてぺしゃんこになって死ななければならない。

ジェームズは水道事業の技術者と言っていたが、実はソマリアでテロ組織のテロ実行を阻止する任務があった。
ソマリアに入ったジェームズは組織に捕まり、拷問され幽閉されてしまう。
ジェームズ・マカヴォイは「X-MEN」でプロフェッサーX役をしているが、今回はやせ衰えてまるで幽鬼のようだ。
今にも死んでしまいそうだが、ちゃんと逆転の見せ場は用意されている。

粗筋を聞いただけでもゾクゾクしてきそうな内容。
これまでヴィム・ヴェンダース監督の作品は、難解なものが多かったが、これはとてもよくこなれていて、サスペンスの切れ味も上々だ。
暗黒の深海に潜っていく不安と、暗黒に閉じ込められた男の不安と焦燥感。
思い出されるのは、甘美な恋の記憶。
そういう対比が効いている。
ヴェンダース監督はドキュメンタリー映画でリアリティー描写を学んだようだ。
とにかく、最後までハラハラしながら楽しめる。

(野島孝一)

8月2日~TOHOシネマズシャンテほかで公開。

公式サイト:http://kodou-movie.jp/

2019年07月21日