阪本順治監督の新作。長野県大鹿村は300年続く歌舞伎芝居が名物。
この村でシカ料理の店を出すカウボーイハットの男、風祭善(原田芳雄)は女房の貴子(大楠道代)に逃げられ、以来18年間独身で通してきた。その善のところへ、駆け落ちしたかつての親友・治(岸部一徳)が貴子を連れて戻ってきた。
貴子は認知症になり、もてあました治が連れ帰ったのだ。普通なら考えられないこの展開。3人ともそろいもそろってお人よしばかり。浮世離れした設定だから笑える。
村人たちの顔ぶれが豪華だ。佐藤浩市がバスの運転手、松たか子が役場の職員、三國連太郎が貴子の父親役。こういう配役のドラマは、なかなか考えにくい。なによりも村歌舞伎の舞台が魅力的だ。
観衆は掛け声をかけながらバラバラとおひねりを舞台に投じる。役者たちは普段、そこいらで畑を耕したり、配達をしている村人たち。こういう文化的な地域のつながりがあることはうらやましい。
歌舞伎もかなり本格的で、原田芳雄らはかなりがんばって稽古を積んだ形跡がある。脚本が荒井晴彦ということもあって、笑わせながら快調に進む。
山や川の自然に恵まれた日本的風景の中で庶民に伝わる伝統芸能が紹介されているので、外国人に見せてもいいのでは、と思えた。
東映系7月16日公開。
映画ジャーナリスト 野島孝一
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