【パリの調香師 しあわせの香りを探して】



 今月初め、朝日新聞の「リレーおぴにおん」欄に、臭気判定士の話が出ていた。臭気判定士というのは、工場などからの異臭の苦情に対し、それが法律の基準に違反していないかどうかを調べる国家資格だという。そういえば、『パリの調香師』の主人公、アンヌも、そのような仕事をしていたことを思い出した。

 アンヌは,ディオールの「ジャドール」を始め、数々の有名な香水を世に送り出したカリスマ調香師だった。ところが、臭覚障害を起こし仕事ができなくなってしまったのだ。感覚を取り戻したあとも、過去の栄光を取り戻すことはできず、事務所から依頼される、匂いに関連した仕事に携わっている。一方、ハイヤーの運転手ギヨームは、離婚して、娘の親権を失う瀬戸際にあり、どうしても仕事を続け、収入を得なければならない。ある日、ほかのドライバーが嫌がっているアンヌからの依頼を受け、迎えに行くが、彼女は噂にたがわぬ気難しやで、運転以外の仕事を頼まれ、いやいやそれをこなしても、メルシーの一言もない。彼女の仕事はもうこりごりと思っていたのだが、なんと、彼女はなぜか彼を気に入ったようで、またご指名が入る。
 その後、二人は衝突しながらも互いに打ち解け、悩みなどを話し合うようになる。やがて、アンヌはギヨームにも鋭い嗅覚があることを発見したのだ。

 匂いが感じられない状況。それは今でこそ「すわ、コロナか!」と思ってしまうが、この作品が作られた2019年には、そもそも新型コロナ・ウィルスの存在は知られていなかった。まさか、こんな世の中になるとは。去年7月、コロナ禍中のフランスで公開され、スマッシュ・ヒットを記録した。 

 原題の”Les Parfums”は、フランス語で、香水の複数形。会話で香りや匂いが表現され、見ている我々はそれを想像するという、珍しい体験ができるこの映画は、大人のプラトニック・ラブを描いた、かぐわしい、おすすめの一本だ。



「パリの調香師 しあわせの香りを探して」公式サイト:https://parfums-movie.com/

 

2021年01月14日