【食の安全を守る人々】

©心土不二              


 アメリカ・カリフォルニア州で学校の用務員をしていた男性がグラウンドの除草のためにラウンドアップを散布していたことで悪性リンパ腫の末期ガンになった。
 彼はモンサントを訴え、裁判では陪審員が全員一致でモンサントに320億円の損害賠償金を支払うよう命令した。

 この事実に驚いた元農林水産大臣の山田正彦がアメリカに行き、原告の男性やアメリカで“遺伝子組み換えを反対する母親の会“を立ち上げた女性に会って話を聞いたことがきっかけとなって本作の企画は立ち上がった。
 資金のなかった山田はクラウドファンディングを始めたところ、1680人を超える人が賛同し、目標金額10,000,000円を越えて倍額の20,000,000円以上の支援が集まった。
 それだけ多くの人がラウンドアップに危険性を感じ、この映画に期待しているということだろう。

 山田はとにかく精力的に飛び回る。
 アメリカでは上記の2人だけでなく、広大な農場で有機栽培の小麦を生産している農家やロバート・ケネディ元司法長官の息子で40年以上モンサントと戦い続けている弁護士、遺伝子組み換えを反対する学者などから話を聞く。

 また国内でも同じようにさまざまな立場の人たちから話を聞き、ラウンドアップの主成分であるグリホサートの危険性を伝え、さらに遺伝子組み換え、ゲノム編集についても話は及ぶ。
 研究者の話は難しい部分もあるが、具体的に図解してくれるのでわかりやすい。

 「遺伝子組み換え」について、言葉としては知っていたものの、スーパーなどで「遺伝子組み換え」と表示された食品を見たことがない。
 「遺伝子組み換え」食品は意外に少ないものかと思っていた。
 ところが、現在は遺伝子組み換え作物の混入率が5%以下の場合は「遺伝子組み換えでない」と表示でき、「ゲノム編集」食品に関しては表示義務さえないと本作で知った。
 安全だと思って家族に出していた食品が、実は安全ではなかったのかもしれないのだ。
 この事実に驚愕し、試写を見た日の夜は食の安全について、家族に熱く語ってしまった。

 食の問題は自分たちの世代だけでなく、子の世代、孫の世代へと影響を及ぼしていく。
 もっと危機感を持たなくてはいけないのかもしれない。
 本作をきっかけに意識を変える人は多いのではないだろうか。

 2021年7月2日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、アップリンク吉祥寺にて公開 他全国順次公開




  堀木三紀  

「食の安全を守る人々」公式サイト:https://kiroku-bito.com/shoku-anzen

 

2021年06月14日