世界最高峰の映画祭が厳戒体制の下、5月17日~28日の12日間にわたり南フランスの高級リゾート地カンヌで盛大に開催されました。昨年のニースのテロ事件の影響により、厳戒体制が敷かれる中での開催となった今年の上映会場付近には、バリケード代わりの巨大な植木鉢が多数並べられ、機関銃を手にしたフランス共和国保安機動隊が警備にあたるという物々しさで、会場でも手荷物検査に加え、空港並の金属探知機も新たに設置されていました。
ですが、フランス大統領選挙の関係で例年よりも一週間遅い会期となり、好天に恵まれた今年のカンヌは、70回目というアニバーサリーイヤーの記念イベントが目白押しで、映画祭自体の華々しいムードはしっかりと維持されていました。
映画祭の柱で、賞の行方が大いに注目された長編コンペティション部門の審査員(出品作は19本)の審査員は、スペインの名匠ペドロ・アルモドバル監督(委員長)以下、監督のパオロ・ソレンティーノ、パク・チャヌク、俳優のウィル・スミス、ジェシカ・チャスティン、ファン・ビンビンらの総勢9名。
日本から河瀬直美監督の『光』が選出されたのを始め、過去に主要賞を受賞した監督や常連監督が居並ぶ豪華なラインナップ(英語作品全てに英語字幕がついたことも新たな試み)でしたが、奇しくも最高賞のパルムドールと次点のグランプリは、カンヌのコンペ初参戦者の頭上に輝く結果となり、開催前から物議を醸した動画配信サービス“Netflix”製作のオリジナル映画2本は無冠に終わりました。
長編コンペティション部門の受賞結果
☆パルムドール:『ザ・スクエア』リューベン・オストルンド監督
☆第70回記念名誉賞:ニコール・キッドマン
☆グランプリ:『BPM(ビーツ・パー・ミニット)』ロバン・カンピヨ監督
☆監督賞:ソフィア・コッポラ監督 『ザ・ビガイルド』
☆男優賞:ホアキン・フェニックス 『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア』
☆女優賞:ダイアン・クルーガー 『イン・ザ・フェイド』
☆審査員賞:『ラブレス』アンドレイ・ズビャギンツェフ監督
☆脚本賞:ヨルゴス・ランティモス/エフティミス・フィリップ 『ザ・キリング・オブ・セイクリッド・ディア』
☆脚本賞:リン・ラムジー 『ユー・ワー・ネバー・リアリー・ヒア』
残念ながら河瀬直美監督の『光』は受賞を逃しましたが、キリスト教関係団体が選出するエキュメニカル審査員賞を獲得しています。なお、他部門に出品された日本映画は4本で、三池崇史監督の『無限の住人』はコンペ外の特別招待部門で、黒沢清監督の『散歩する侵略者』はある視点部門で、平柳敦子監督の『オー・ルーシー!』は批評家週間部門で、井樫彩監督の『溶ける』は学生映画対象のシネフォンダシヨン部門で上映され、それぞれ大いに気を吐いていました。