◆ 第72回カンヌ国際映画祭、FIPRESCI賞リポート 齋藤敦子

イザベル・ダネル会長(中央)の挨拶、並んでいるのは今年の審査員。


 第72回カンヌ国際映画祭は5月14日(火)から25日(土)まで開かれ、既報の通り、ポン・ジュノ監督の『Parasite(パラサイト)』に韓国初のパルム・ドールが授与されました。
 今年のFIPRESCI賞も、昨年同様、本賞の授賞式直前、25日午後4時に授賞式が行われました。まずはイザベル・ダネル会長からの挨拶があり、それぞれの選考を担当した審査員から、コンペティション部門パレスチナのエリア・スレイマン監督:『天国に違いない』、ある視点部門:ロシアのカンテミール・バラゴフ監督『ビーンポール』、パラレル部門(監督&批評家週間):アメリカのロバート・エガース監督『ザ・ライトハウス』(監督週間)の各賞が発表になりました。エリア・スレイマン監督は本賞の授賞式のため、エッガース監督はすでに帰国したため、残念ながら登場しませんでしたが、ある視点部門を受賞したカンテミール・バラゴフ監督が来てくれ、受賞のスピーチを行いました。
 『天国に違いない』は、パレスチナに住む映画監督(スレイマン本人)が、次回作の企画のために世界中を旅しながら、奇妙な出来事に遭遇するという社会派コメディ。本賞ではスペシャル・メンションになりました。
 カンテミール・バラゴフ監督の『ビーンポール』は、1945年のレニングラードを舞台に、戦後の混乱の中で生きる2人の娘を描いたもの、パラゴフ監督は2年前の監督デビュー作『クローズネス』でも、ある視点部門のFIPRESCI賞を受賞しており、そのときはロシア語でのスピーチでしたが、今回は英語でスピーチし、国際的に有名になるというのはこういうことかと感心しました。
 『ザ・ライトハウス(灯台)』は、モノクロームのスタイリッシュな映像が評判になった作品で、ウィレム・デフォーとロバート・パティンソンが灯台守を演じています。すでにアメリカに帰国したエガース監督から、スマートフォンを通じて受賞のスピーチが伝えられました。
(齋藤敦子)

「ザ・ライトハウス」のエガース監督からスマートフォンでメッセージを伝えるプロデューサー。

英語でスピーチする「ビーンポール」のカンテミール・バラゴフ監督。アレクサンドル・ソクーロフ監督に師事した期待の新鋭です。

2019年08月16日