
左写真:石井岳龍監督
中写真:左から「利休にたずねよ」田中光敏監督、一人おいて、グランプリ代理受賞者、中谷美紀、森田大児プロデューサー、原作者の山本謙一
右写真:国際批評家連盟授賞式の記念写真。左から二人目の男性が「ザ・ロング・ウエイ・ホーム」のアルファン・エシェリ監督
現地8月22日から9月2日まで開催された第37回モントリオール世界映画祭にFIPRESCI(国際批評家連盟)審査員として参加しました。この映画祭の創設者セルジュ・ロジック氏は日本映画ペンクラブの設立メンバーの川喜多かし子女史と親しく、82年に「誘拐報道」(伊藤俊也監督)が審査員賞を受賞したとき、川喜多女史は審査員のひとりでした。
当初、FIPRESCI公式サイトに載っているようにメンバーは7人の予定でしたが、不幸にも在外カナダ大使館のストライキでロシアから参加のメンバーのビザが発給されず、急きょ6人になりました。このことが知らされたのは映画祭開催前日のことでした。
FIPRESCI(国際批評家連盟)賞は、メインコンペ部門と長編第1作部門からそれぞれ1本に授与されます。2つの部門にエントリーされたのは各々20本。メンバーは一人20本+αを見ることになります。
モントリオールはカナダではフランス語圏で英仏語以外の映画の字幕が、英語字幕の上映回とフランス語字幕の上映回に分かれていて、間違えると劇場に足を運んでも無意味になってしまいます。そこが英仏語字幕が通常の映画祭との違いです。
FIPRESCI賞はメインコンペからドイツ映画「ウェスト」(クリスチャン・シュヴァコフ)が選ばれ、同時に主演のイェルディス・トリーベルは主演女優賞を受賞しました。長編第1作部門からはトルコ映画「ザ・ロング・ウェイ・ホーム」(Alphan
Eseli)が選ばれ、同時に新人賞を受賞しました。
FIPRESCI賞受賞式は、最終日夜のクロージングセレモニーに先立ち、同日午後4時からエキュメニカル賞と同時に行われました。グランプリと観客賞も受賞したポーランド映画「ライフ・フィールズ・グッド」がエキュメニカル賞を受賞しましたがマチュイ・ピエプルシツァ監督が欠席のため、FIPRESCIメンバーのポーランド人が代理で受賞することになり、FIPRESCIメンバーは最後までてんてこ舞いでした。
映画祭では432本の映画が上映されましたが、新人監督の作品が多く、新人の才能に注目しています。日本映画ではメインコンペ部門で上映された市川海老蔵主演「利休にたずねよ」(12月7日公開、田中光敏監督、山本兼一原作)が、最高芸術貢献賞を受賞しました。日本映画がこの賞を受賞するのは熊井啓監督の「式部物語」(90)以来のことです。直木賞作としては「鉄道員」(99)以来の受賞でしょうか。ほかにも28年ぶりにこの映画祭に参加した石井岳龍監督の「シャニダールの花」、館内を笑いの渦に包んだ市井昌秀監督の「箱入り息子の恋」、タナダユキ監督の「四十九日のレシピ」、奥田瑛二監督の「今日子と修一の場合」、白石和彌監督の「凶悪」など個性ある日本映画に観客が集まりました。同時開催のカナダの学生を対象にした映画祭でも、現地在住の青木義乃さんの1分間の短編「メープルシロップ」が上映されました。この映画はこの後、やはりFIPRESCI賞があるライプチヒ国際ドキュメンタリーアニメーション映画祭(ドイツ)に招待されました。
受賞結果
http://www.fipresci.org/
http://www.ffm-montreal.org/en/press-releases/49-awards-2013-montreal-world-film-festival.html
小張アキコ