
2018年1月15日、第1回アジア映画批評家総会(Asian Film Critics Assembly)が、バングラデシュの首都ダッカで開催されました。
例年FIPRESCIの総会はイタリア南部のバーリで開かれますが、出席できるのはヨーロッパに限られ、アジアからの参加者がほとんどないことが問題になっていました。今回はダッカ国際映画祭ディレクター、アーメッド・ムスタバ・ザマル氏のご厚意で、ダッカ国際映画祭開催中(1月12日から20日まで)に第1回アジア映画批評家総会が開かれることになったもので、いわばFIPRESCIアジア部会のようなものです。ただし、第2回が開かれるかどうかは未定です。
出席者は、トルコ、アルメニア、イラン、キルギスタン、タジキスタン、インド、バングラデシュ、スリランカ、中国、韓国、日本の12カ国で、中国には映画批評家の組織がないためにチャオ・リュウインさんが個人として参加、他にも、アジア映画についての著作があるスロバキアのヴィエラ・ランゲローヴァさんがオブザーバーとして出席しました。
この総会は、アジア諸国の親睦を図るのが主目的で、第1回ということもあり、会議は各国の映画批評の状況をそれぞれの参加者が発表するという形で行われました。各人が発表した原稿は、FIPRESCIの会員ページに掲載されますので、興味のある方はご覧ください。
総会に先立つ13日、14日の2日間、アリアンス・フランセーズを会場に、第4回ダッカ女性と映画国際会議が開催され、アリン・タシアンFIPRESCI会長を始めとする映画研究者の発表がありました。ちなみにダッカ国際映画祭には女性監督の作品を集めた部門があります。
また総会の翌16日には、参加者によるエクスカーション(遠足)があり、ダッカ市内の史跡、アーシャン・モンジール(19世紀に建てられた領主の邸宅を博物館としたもの)、アルメニア教会、ラールバゲル・ケッラ(17世紀にムガール朝皇帝の息子が建てた城)を巡り、最後の独立戦争博物館では、バングラデシュの映画人との交流会がありました。
ダッカでは2年前に日本人のJICA職員7名を含む21人が犠牲になったテロ事件が起こったのをきっかけに警戒が厳重になったそうで、ホテルの入口や移動の車に小銃を持った警官が必ず配備されるという物々しい雰囲気の中でしたが、韓国、中国といった近隣諸国の批評家と親しくなれたこと、特に、中国のチャオ・リュウインさんから中国の映画批評の現状や検閲について直接話を聞けたことは大きな収穫でした。
今回、残念ながら直前で参加を見送られたフレディ・ウォン氏による香港映画批評界のレポートが、とても興味深く、関心を持たれる会員の方も多いと思いましたので、ウォン氏のご了解をとって別枠で掲載することにしました。ぜひご一読ください。