山田火砂子監督は現代ぷろだくしょんを主宰された山田典吾プロデューサー夫人で、夫君の死後71歳から監督に挑戦されている。
第1作「石井のおとうさんありがとう」(2004)では明治の岡山で孤児院を作った石井十次を、第2作「筆子・その愛ー天使のピアノー」(2006)では知的障害児の教育に生涯をささげた滝野川学園の石井亮一・筆子夫妻の苦闘を描いたが、今回は岡山県高粱生まれの留岡幸助(1864~1934)をとりあげている。
自由と平等を求めた明治の若者のキリスト教への傾倒を背景に、幸助が北海道・空知監獄の教講師として赴任、監獄改良運動から、犯罪を防ぐため少年感化を実現しようと「家庭学校」をつくる努力を描き、教育映画としては優れた出来といえよう。
この種の伝記映画にありがちなエピソードの羅列はやむを得ないが、時代考証のしっかりしている点、加えて隆大介、石倉三郎、市川笑也、村田雄浩、中条きよし等多彩な出演者がうまくつかわれている点は注目したい。
森谷 巌
まじめに作れられた映画で、日本で初めて少年の更生施設を作った留岡幸助の伝記映画として一定の成果を上げている。
でも筋を追うのが精一杯で余裕というものがまったく感じられないのが残念だ。
野島孝一
この映画で、留岡幸助という人物を知ることができたのはよかったと思う。しかし、良い人間を描けば良い映画になるかといえば、否である。これは、描き方があまりにも単調で、21世紀に作られたとは思えないほど。
題材は興味深いにも関わらず、他人に見せる工夫が感じられないのだ。これでは、キリスト教布教映画以外の何物でもないといわれても、やむを得ないであろう。
資金集めに苦労したに違いないとか、高齢にもかかわらずよく撮ったなど、同情的意見があるのはわかるが、だからといって、映画の完成度の低さが許される訳ではない。
勿論、この映画の存在価値を否定する気は毛頭ないが、日本映画ペンクラブの推薦映画とするには、ある程度のレベルを上回っていることが必要だと思うので、個人的には推薦に反対である。
宮内鎮雄
青少年の犯罪を少なくするためには、いかに教育、環境が大事かしっかりと描いた作品。決して地位や名誉が欲しくて頑張った人ではないので、ハリウッド映画のような派手な出世ものではないが、丁寧に心に訴えかける。
留岡幸助の妻役工藤夕貴の夫を支える笑顔こそ、失われた日本女性の美しい姿ではないだろうか。
久々に礼拝や朝礼の前の良いお話を聞くことができた気分だ。
国弘よう子