幸せのありか


「幸せのありか」

 「幸せのありか」はマチェイ・ピェブシツア監督によるポーランド映画だ。実在する脳性麻痺障害者にインスパイアされて作られた。

 1980年代、少年のマテウシュは知的障害者と断定されていた。体には障害があるが、実際のマテウシュは正常な判断力、知力があった。だが、それを相手に知らせるすべがない。ただうめくばかりで、意思が相手に伝わらない。医師には見放され、植物人間のような扱いを受けていた。しかし父親は少年マテウシュに天文学を教え、母親は愛情をもってマテウシュに接した。学校へ行かなくてもマテウシュはさまざまなことを親に教えられた。やがて少年は近所の少女と近づきになる。彼女はマテウシュを普通の男の子として受け止めてくれた。だが、彼女は自分の乱暴な父親に怯えて姿をくらませてしまった。話し相手を失った少年は再び孤独に閉じこもるしかなくなった。

 青年になったマテウシュは施設に入る。ボランティアの若い女性はマテウシュの恋心に応えてくれて、彼に生きる希望を与えた。しかし結局、再婚した父親への復讐の道具に使われただけだった。道具にされただけだったとわかったマテウシュは深く傷つく。そんなマテウシュに他者とのコミュニケーションの方法を教える施設の職員が現れる。

 パソコンで自分の気持ちを自由に伝えることができるようになったマテウシュ。パソコンはこんなところでも人の役に立っている。

 この映画は2013年モントリオール世界映画祭でグランプリ、観客賞、エキュメニカル審査員賞を受賞するなど世界の映画祭で高い評判を得た。俳優は特に青年のマテウシュを演じたダヴィド・オグロドニクが秀逸で、彼を本物の障害者だと思ってしまった。「ギルバート・グレイプ」のレオナルド・ディカプリオを思い出す。ディカプリオを本物の知的障害児だと思った私がバカだった。

野島孝一


12月13日~岩波ホール公開。
幸せのありか 公式サイト

2014年11月08日